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2020.07.28 コラム

木造は65年、RC造は120年以上?建物の寿命の本質を知る【part2】

よく聞く木造30年、RC(コンクリート)造37年という住宅寿命は役所的解釈に過ぎず、実際は築100年を超す京都の長屋などをリノベーションして住むような方も少なくありません。より実質に沿った住宅寿命を推し量る研究はいくつかあり、木造は現時点で65年を平均寿命とするデータが支持されています。一方マンションなどコンクリート造の場合は物理的には約120年は持つというデータが出ています。そこで今回は建物の寿命の本質について解説します。

 
結局は寿命の本質は「人為的な決定」中古でも快適な暮らしが今後はさらに当たり前に?
中古住宅を購入する状況に立った場合、目安的な意味で住宅の寿命を把握したいというのは妥当な質問だと考えられます。こうした疑問をすっきりさせてもらうためにpart1の記事で研究データもご案内しましたが、正直なところまだ建物の寿命議論の本質的な部分まで理解したとは言い難いです。
・”長持ちする家”の条件は質より意思?築70年メンテナンス無しで住み続ける住人の心理とは?
住宅をメンテナンスすることによる家の耐久性向上を唱える説に懐疑的であった松村秀一教授は、教鞭をとる東京大学の周辺で戦災を免れたエリアの住宅を調査した中で「築70年の木造住宅に住み続けているのは建て替えブームに”ちょっと乗り遅れた”お年寄りの一人暮らしなどで、特別手入れをしているでもなく”死ぬまでは建て替えない”(=築90年は見込まれる予測)つもりのようだ」という方のエピソードに注目しています。もちろん火災や地震、戦争などで致命的なダメージを受けなかったことや都市計画による立ち退きの必要もなかった一種の”運のよさ”も関係してくるでしょうし、こうした極端な例を持って建材・施工の質やメンテナンスの効果を否定することはできないでしょうが、例えば木造住宅を70、80年持たせようとするくらいのことは難しくないことを証明している例の一つだと言えます。これが400、500年もつ家を作ろうというのであれば建物の構造自体の話にもなってくるかもしれませんが、家を長持ちさせるという目標がせいぜい200年程度ならその秘訣といえば他でもない住人の意思以外の何者でもないのかもしれません。
・リフォーム業界のサービスも充実しつつある中、古くても快適な住まいも実現可能に
先ほどの松村教授が紹介されたお宅ですが、70年も手入れをしていなければ見た目にも老朽化が進み、間取りや設備も使いにくい、寒くて空気もちょっぴりかび臭いおうちであっても驚くほどではありません。教授はこのお宅がそうした住環境であったかどうかについてまでは言及していませんが、もし「古い家に住むこと=我慢や妥協」なのであれば、どんなに200年住めますと言ったところで「とはいっても」となるのは当たり前です。ところが近年はリフォームだけでなく、基礎構造のみ残してスケルトンにした建物をリノベーションするような業者も出てきており、建物自体が古くても十分に安全で快適な環境を確保できることが実例として増え始めています。
・住宅の寿命は延長傾向にある?
こうした社会的な意識変化の推移は数字でも確認することができます。木造住宅の寿命についての項でご案内した小松教授らの研究データは2011年に行われた調査に拠るものですが、実は同様の調査は同教授らによってこれ以前に2回行われています。初回の1997年の調査では43.53年とされたこの平均寿命は2006年に54年に伸び、さらに2011年の調査では65年と、3回の調査が行われた14年の間に21.5年も寿命が延長しています。この期間中建築技術が劇的に上がったとは考えづらく、1990年代後半から世帯平均所得が下がり始めたこともありより多くの人が古い家に住み続ける方を選んでいると考える方が自然です。部分的補修を行うリフォームに加えてスケルトンリノベーションが流行りはじめ、中古住宅に新たな価値を付けて販売する業者が増えてきたのも2000年代中盤あたりからと言われています。いわゆるスクラップ&ビルドが健常であると錯覚させるような新築優位の政策や市場も変わろうとしてきています。2012年あたりからリノベーションブームに拍車がかかってきていることや、長屋や古民家の保存に積極的な各自治体や団体が増えていること、国土交通省などを主導としたリフォーム市場活性化や住宅の長寿命化計画など、今後さらに住宅の寿命が伸びていく予測を裏付ける理由は十分過ぎるくらいです。現在は「築40年はあと何年もつか」という質問がほとんどの中古物件購入者の懸念点でしょうが、これが他でもない住人の気持ちの持ちよう次第だという考えが浸透すれば「築40年の家の残り寿命をいかに伸ばすか」という質問にすり替わっていくと考えられます。