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2020.06.29 コラム

「換気」を考えたリフォームをしよう!【part1】

周到に計画された換気でお家の空気環境は大きく変わります。高気密住宅の普及で義務化された24時間換気の必要性と実際の換気計画の立て方や換気の種類についてわかりやすくまとめました。換気に配慮したリフォーム計画の参考にしてみてください。

 
1.24時間換気の必要性
住宅の高気密化に伴って義務化された24時間計画換気ですが、そもそもなぜ住宅は気密性を高めなければいけないのでしょうか。この項では住宅づくりにおいて重要性が増した24時間換気についてその背景を理解しながら、換気計画の目的を明確にしていきます。
・快適さの追及に際しての換気の重要性
夏の暑さ対策のために建物の内外や部屋ごとを緩やかに仕切っていた、言い換えれば隙間が多く存在した古来の日本家屋ではもともと高度な換気計画は必要とされませんでした。しかし健康的で快適な住まいの温度環境を考えた時、火鉢の周りに集まって局所的に採暖する伝統的な日本の冬場の過ごし方はむしろ避けるべきで、全室において均一で適切な室温が保てる住まいが望まれるようになってきています。快適さの追及に伴い危惧されるのが消費エネルギーの急増ですが、ここで注目されるようになったのが建物の高断熱高気密化による建物のエネルギー効率の向上です。適切な断熱・気密構造を持った家であれば、一戸建てでも気候によっては無暖房、寒冷地でもエアコン1台で一戸建てまるまる暖められることが期待され、今や快適な住宅づくりには欠かせないとも言えます。
・シックハウス症候群と24時間換気義務化
住宅の快適性と省エネ性を両立するために大いに期待が寄せられた高気密住宅ですが、副次的な問題が露呈しはじめます。シックハウス症候群として知られるこの問題は、建物の気密性が高まったことでこれまで建材に使われてきた防蟻剤や木材の保存剤といった薬剤から揮発する有害物質の濃度が住宅内において異常に高まり、身体的に異常をきたすことで知られます。この問題に取り組むため政府は2003年建築基準法を改正し、特定の化学物質の使用を禁止ないし規制するとともに適当量の換気が可能な設備を設置することを義務付けました。この強制力のある法律ではホルムアルデヒドのようなシックハウス症候群の原因物質に加えて、人間の呼気による二酸化炭素や日常生活において排出される水蒸気、臭気などの濃度を一定以下に保てるよう、以下でご案内するような換気量を目安として設定しています。
・24時間換気への批判/窓を開けていても換気は必要?
24時間換気に関しては批判も少なくありません。24時間換気扇を付けっ放しにすると聞くと電気代を気にする方もいらっしゃるかもしれません。実際一番電気代のかかる第1種換気と呼ばれる換気システムでは約1,000円と無視できない電気代が毎月かかってきます。そもそも高気密化していなければ必要の無い経費だと言う意見は間違いではないものの、だから高気密化はしない方が良いと結論を早まるべきではありません。そもそも隙間風が入るような家では冷暖房の効きが格段に下がり、月の光熱費は高気密化している場合と比較して1,000円上がる程度では済まないためです。コスト面から言っても「気密 + 24時間換気」の方がお得と言えるのはもちろん、気密をしっかりしていれば室内の温度差も減って快適性が増します。それでは冷暖房の必要無い時期はどうでしょうか?せっかく気候が良くても窓は閉めて換気扇を回しながら室内環境を一定に保つのが正しいでしょうか?もしくは窓を開けても換気扇を回し続けるべきなのでしょうか?24時間換気は基本的に窓の開放による通気の機会が少なくなる冬場でも適当量の換気が得られるように計画されますが、気候が良い時期に窓を大きく開け存分に外の空気を楽しむことは家主の特権として奪われることはなく、窓の通風によって十分に換気ができれば基本的には換気扇を止めても問題ありません。
 
2.必要換気量を知る
換気の重要性が分かったところで、実際の換気計画を立てるにあたっての基礎知識を確認します。24時間換気をするにあたっては過不足ない換気量を得られるような設備と換気動線を計画に含めます。換気量の目安は「一時間あたり室内容量の半分」もしくは「住人数 × 30㎡」のいずれか多い方を目安とします。
・換気回数0.5回以上の根拠
換気量の目安として一般的に言われる換気回数0.5回/hとは一時間あたり室内容量の半分を意味します。0.5回の根拠は実証データを元にしたもので、有害物質の濃度(VOC濃度)を無害レベルまで希釈するための換気量を測定し、基準値として設定しています。ただ0.5回以上換気が必要な場合もあり、狭い空間により多くの人数が居住する場合には吐き出す二酸化炭素を許容値以下に希釈できる換気量が必要です。その目安が人数 × 30㎡/hで、換気計画を立てる際はいずれか多い方を基準とします。
・標準以上に換気が必要な場合
空気質を良好に保つために気をつけなければいけないのはシックハウス症候群の原因物質や人間の呼気だけではありません。室内でタバコを吸う方は少なくなってきているかもしれませんが、タバコを一本吸ったら有害物質などの希釈のために130立方メートルの換気が必要とされます。30坪一戸建ての空気を全部入れ替えるイメージです。石油ストーブなどの器具がある場合は燃焼に必要な酸素を供給できるだけの換気性能が必要で、灯油ストーブなら1000kcalあたり200立方メートル/h以上の換気が必要とされます。ちなみに開放式の燃焼器具に分類される灯油ストーブやファンヒーターは必要換気量が大きく増えることに加えて燃焼で生じる水蒸気が結露につながることも指摘されており、特に高断熱・高気密住宅の標準装備としては現実的ではないことがほとんどです。また浴室や台所といった特定の目的のために使われる空間については、次世代省エネ基準で表にあるような換気量を目安として定めています。これらはセントラル換気で動線に組み込む場合を除いて24時間換気の対象ではなく、局所換気といって利用した際にのみ相当量の換気を行う設備を設置することになります。