リフォームにおける水道工事の基礎知識
新しく家を建てるときや、リフォームで水回りの移動を行ったときに必要になってくる水道工事ですが、あまり頻繁に行うものではないので、いざ工事をするとなったとき、何をどうするのか気になりますよね。この記事では、水道工事行う前に知っておいたほうがいい基礎的な知識について解説します。
1.水道工事とは何か
水道工事について説明する前に、まずは水道の基本について説明します。水道の解釈はいろいろありますが、一般的には浄水施設から一般家庭までの上水道と、一般家庭から下水処理場までの下水道の2種類に分かれます。水道に関係する工事はすべて水道工事に分類されますが、私たちが意識するのは家の近くまで来ている水道管分岐部から蛇口、排水口から公共ますまでの間です。各家庭などから排出される汚水を公共の下水道に流すため、それぞれの敷地に市区町村では「公共汚水ます」というものを設置します。公共ます以降の道路側の水道工事は自治体が行い、自宅の敷地内の工事はご自身で業者に依頼して行います。
2.水道工事の種類
水道工事と一括りにされていますが、実際には大きく分けて3種類の工事があります。業者によってはそれぞれの工事に対して得意不得意がありますので、工事の種類を把握して最適な業者を選ぶようにしましょう。給水管の引込工事、室内の配管工事、下水道排水工事の3種類が水道工事の分類になります。それぞれの工事について、分かりやすく説明していきます。
・給水管の引き込み工事
家を建てるときに行うのが、給水管の引き込み工事です。この工事は道路の下などに埋まっている水道管から敷地内の水道メーターまで、配管を引き込む工事がこれにあたります。「水道取り出し工事」と呼ばれることもあり、自治体の指定を受けた水道工事業者しか行うことができません。新築のとき以外にも、給水管の径を大きなものに取り替える工事や、水道管の素材を変えるような工事も給水管の引き込み工事に含まれます。これらの工事の管轄は自治体が行っていますので、工事には自治体の許可が必要です。ただし、発生する費用は工事を依頼した方の負担になります。公共のインフラですし、宅地外の工事ですので自治体負担だと思っている方も多いようですが、引き込みをするのは個人の都合になりますので依頼者負担となります。家を建てるときは、その水道引き込み費用もきちんと予算に組み込んでおきましょう。
・室内の配管工事
水道メーターから各水道設備の蛇口までの工事が、室内の配管工事です。新築で家を建てる場合だけでなく、リフォームでキッチンの場所を変えた場合や、2階にも洗面台を追加で設置するような場合に、室内を張り巡らせる配管の設置工事を行います。この工事は屋内配管工事とも呼ばれ、この工事も原則として自治体の指定を受けた水道工事業者が行う必要があります。敷地内で発生した水に関するトラブル対応も、水道工事になります。パッキンやカートリッジの交換、排水口やトイレの詰まりなどの修理も水道工事業者が行います。これらの対応はDIYでも一部は対応可能ですので、簡単な部品交換だけで工事を終わらせることもできます。
・下水道排水工事
水道工事は上水道に関する工事だけで、下水道排水工事は水道工事に含まれないとしているサイトもありますが、ここでは下水道の工事も水道工事のひとつとしてご紹介します。上水道と下水道は必ずワンセットになっており、蛇口の位置を変えたのに排水口の位置がそのままということはありません。下水道排水工事は、排水口から公共ます(汚水ます)までの配管を行います。建物によっては臭いの逆流を防ぐために、台所やトイレなどの排水口の先に汚水ますを設置するケースや、浄化槽の設置が義務付けられているケースもありますが、これらの下水道工事に含まれています。
3.水道工事にかかる費用はいくら?
次に水道工事にどれくらいの費用がかかるのか、具体的な金額をご紹介します。ここでの金額はあくまで相場ですので、地域やご自宅の状況によっては上下することもあります。
・給水管の引き込み:30万~50万円
・室内配管:10万~20万円
・水回りの水漏れと詰まり:5千~4万円
・下水道排水工事:20万~50万円
・浄化槽設置工事:90万~100万円
給水管の引込工事は、公共の水道管からの引き込み距離が長かったり、アスファルトが分厚かったりした場合には相場よりも高くつきます。また、下水道工事も公共ますまでの距離や、浄化槽の有無によって金額が変わってきます。
4.集合住宅での水道工事の費用
上記でご紹介したのは一軒家などの水道工事費用でしたが、ここではマンションやアパートなどの集合住宅での水道工事費用についてご紹介します。マンションで水道管の工事なんてできるの?と疑問に感じるかもしれませんが、次の2つの条件を満たしていれば工事可能です。
・専有部分であること
・管理規約で認められていること
まず重要なのは、専有部分にある配管でないと工事できないということです。専有部分というのは、所有者が単独で所有している住戸部分のことです。室内の床や壁、天井といった境界線の内側のことですが、正確には目に見えている床や壁ではなく、その裏側にあるコンクリートの仕切りの内側が専有部分になります。一般的に集合住宅の配管は、目に見えている床とその下のコンクリートの間を通っていますので、その部分のリフォームは可能です。賃貸の場合に問題になるのは、給水管ではなく排水管であることがほとんどです。古いマンションは排水管が下階の天井を通過していることもあり、この場合は他人の専有部分になるため工事できません。また、マンションなどの管理規約でリフォームが禁止されている場合は、専有部分であっても水道工事はできません。工事音が発生することでNGとされていることもありますので、リフォームする前に必ず確認してください。集合住宅で水道設備の移動リフォームなどを行うのであれば、大体40万円程度が相場ですので、配管の改修を行うのであれば70万円前後と考えておきましょう。
5.水道工事の費用が高くなる要因
水道工事の費用をご紹介しましたが、同じ工事でも費用に開きがあるのが分かりますよね。30万円と50万円ではかなりの金額差です。なぜこのような費用に違いが出てくるのでしょうか。費用が高くなるポイントは、家の前まで水道管が来ていない、床や壁を壊す必要があるの2つです。それぞれのポイントについて、詳しく説明していきます。
・家の前まで水道管が来ていない
引込工事の費用が高くなる要因は、道路の下の水道管から宅地内の水道メーターの距離が長いことにあります。例えば家の目の前まで水道管が来ていれば、引込工事は2mくらいで終わります。ところが、家が通りから奥まった場所にある場合、10m以上も地面を掘って配管しなくてはいけません。目の前の道路に水道管があっても、大きな幹線道路で水道管は反対側にあるようなケースでは、道路を横切る形で水道管を引き込みますので、工事が大掛かりになり警備員を依頼するなどの費用も発生します。本来は土地を購入するときに、水道管の位置を調べて置くべきです。ただ、すでに購入済みの場合で水道管が近くまで来ていない場合には、高額な費用が発生することを頭に入れておきましょう。
・床や壁を壊す必要がある
家を建てる時には壁などがない状態で配管工事をするので、それほど手間はかからないのですが、一度配管したものを、リフォームなどで移動させるとなると、床や壁を取り外す必要があります。表面的に取り外すだけならいいのですが、コンクリートの梁に穴を開ける必要がある場合、工事が大掛かりになり費用が高くなります。コンクリートの基礎よりも下に配管があり、この配管を取り除いたり交換したりする場合にも、工事が大掛かりになります。基礎でなくても土間の下など、取り出すのに手間がかかる場合には、どうしても費用が上がってしまいます。さらに水漏れなども、単純に劣化したパッキンやカートリッジを替えるだけなら安くできますが、配管に亀裂が入っている場合になどには、配管そのものを替えなくてはいけませんので、こちらも高額な費用が発生します。
6.水道工事の工事期間とは
・水道管の補修:1時間
・水道管の交換:1日
・下水管の清掃:90分
・室内の水道管引き換え:1日
水道管は目に見えない場所を通しているため、工事には時間がかかる傾向にあります。露出している部分の補修程度なら1時間もあれば終わりますが、水道管を交換したり、蛇口の位置を変えるリフォームをしたりすると、水道工事だけでも1日かかります。また、引き込み工事の場合には手続きなどが必要になりますので、水道管が近くに来ているときでも申し込みから2週間はかかりますし、水道管が家のそばまで来ていない場合には、かなりの長い距離を工事することになるため、4ヶ月程度かかります。引き込み工事は思った以上に時間がかかることもありますので、新築の場合にはできるだけスケジュールに余裕を見ておきましょう。